[日誌]5月8日『ふたたび接近する木星』1 出演者による記述

 犬飼さんの到着を待つ間、台本を一度読んでみる。わたしと向かい合うような形で西山さんと本橋さんがいる。ふたりは台本を床に置き、正座で読んでいる。なぜかそれがすごく記憶に残った。わたしは片手に台本を持ち、身振りをつけながら読んでみる。もう一つの出演場面『真昼に見える木星』では、ペンをひたすら動かしながら読んでいたことを思い出す。読みながら意味を取り違えていた、意味がわかった箇所、などに印をつける。
 犬飼さんが来て、もう一度座りながら読んでみる。一度目よりも開けている感じがして、空気が違うことに驚いた。犬飼さんは台本を見ているのだろう、パソコンを抱えながら唸るのが何度か見える。読み終えると、犬飼さんがいくつか問題点をあげた。そのうちの一つ、わたしの役が話す内容が甘いのではないか、というのがあった。わからないでもないが、それが悪いのか良いのかはわからない。
 立ってやってみる。小道具もあり、動きもつき、その分言葉にニュアンスが足されていく。でも座っているときより密度は薄い気がした。何度か立ってやってみる。いくつかのト書きに動きがつき形が作られていくが、体感としては薄いままだった。
そもそもわたしにあてられた役とわたし自身が合っていない、わたしの性格に寄せていった方がいいのではという話になる。『真昼』ではわからなかったことがここで発覚した。
時間が足りなくなり、場所を変えて再び読み合わせ。今度は座りながら。立ちながらの時より、一回目の読みより、密度があった。
そのままの状態で何度か読む。途中、ほかの場面の台本を山村さん、山科さんと三人で読んでみる。ある程度読んだところで止め、「松竹さん、何の話がいいと思う」と犬飼さんに聞かれた。正直何も思い浮かばず、良い提案はできなかった。

 この日の稽古の間、終始とある感覚がしていた。時間が体に引っかからない、という言い方が自分ではしっくりくる。つまりどういう感覚なのか…、主観が働いていなかったのではないだろうか。共演者四人から少しずれたところにいて、本来自分が過ごすべき時間を外から見ていたのかもしれない。
ここまで書くのに大分時間を使ってしまった。この稽古の帰り道、都合の良い駅へ向かおうと一人で当てずっぽうに道を歩いてみた。当然ながら迷ってしまい、雨も降っていたので寒くて後悔した。

1995年千葉県生まれ。 高校在学中に出演した自主映画をきっかけに、役者としての活動を始める。 <映像>「彦とベガ」(谷口未央監督)「戦慄怪奇ファイル超コワすぎ!FILE-01 恐怖降臨コックリさん」(白石晃司監督)「なりゆきな魂、」(瀬々敬久監督)など。<舞台>ナカゴー「キンダガートンコップ」ほりぶん「牛久沼」東葛スポーツ「短編集」など。