『木星のおおよその大きさ』について

宇宙は社会の縮図である

【(株)ジュピター】を舞台に、喫煙所でのマナー、目に見えにくいジェンダー・バイアス、バレンタインのチョコ配布、ランチタイムの人間模様など、職場で起こる些末で根深い問題をユーモアと皮肉を込めて描く。ミニマルな作風で知られるわっしょいハウス犬飼勝哉による新作長編。

木星は 一周してみて はじめてその大きさがわかる

昨年より長期間の制作を経てまいりました「木星シリーズ」。
その完全版として、新作『木星のおおよその大きさ』を2018年6月に上演いたします。

本作品は全部で七場の長編です。七場はそれぞれ短編として独立しますが、すべてが合わさることで、ひとつの長編作品を構成します。

(株)ジュピターの周囲を巡る七場 —それではプログラムをご紹介します。

 

■第一場『木星の日面通過』

煙草を吸っている時間というのは、はたして、仕事のうちに入るんでしょうか

喫煙者の気持ちは喫煙者でないと、非喫煙者の気持ちは非喫煙者でないとわからない。ジュピターの喫煙所はビル裏口に所在する。喫煙者にしてみれば肩身が狭く非喫煙者にしてみれば通り道なので、双方から評判がすこぶる悪い。
(出演者三名/25分)


■第二場『木星からの物体X』

私てっきり男性の方だと思って、メールのやり取りをさせていただいておりまして、

木星に新規取引先の担当者が到来。女性である。職場における男女の「違い」は時として「差別」となり、気づかれにくいかたちで私たちの身近に存在している。省みられる場面も近年では増えてきたがまだまだバランスは適切でない。
(出演者三名/25分)


■第三場『真昼に見える木星』

ランチに1,000円以上、というのは私にとって罪悪感でもありますね

それは左利き用のキャッチャーミットと同じく、ありそうで存在しないものという意味の隠語だ。(株)ジュピター ――この物語はフィクションである。舞台上に登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係がない。
(出演者四名/15分)


– 途中休憩 –
(5~10分)


■第四場『木星の新衛星発見』

チロルチョコとか、キットカットとか、「ひと目で義理とわかるチョコ」ブラックサンダーとか

木星は太陽系惑星において最多の衛星を抱える天体だ。昨年また新たに二つ発見され合計六十九個となった。新衛星はいずれも非常に小さな天体で、木星から二千万キロメートル以上離れたところを約六百日かけて公転する。名前はまだない。
(出演者三名/20分)


■第五場『木星の逆行』

やっぱりこう、人生設計、じゃないですけどいろいろと考える年齢ですよね、こう、ライフプラン的なものを

二〇一七年二月六日、天秤座の位置にあった木星が逆行を開始する。吉星である木星の逆行は、転機をその人にもたらすという。ふたたび順行となるのは六月九日のことだ。ちなみに間違えて反対方向のエレベーターに乗ることも、ここでは「逆行」と呼ぶ。
(出演者二名/10分)


■第六場『ふたたび接近する木星』

それでは本日は、あらためまして、よろしくお願いいたします

こちらとしては、初回は概要の説明に終始したため、詳細のすり合わせは二度目からだ。予算を含めたマッシュアップも検討のうえ、本案件にコミットした提案事項も弊社側から複数用意している状況だ。二度目は一度目よりも、概して大きくなるものだ。
(出演者五名/15分)


■第七場『木星のおおよその大きさ』

あれ。これTOTOかと思ったら、LIXILって書いてある

当然ながら男子トイレに立ち入ったことのある女性は少ないだろう。横並びの小便器にはひとつずつセンサーが付いている。人が前に立つと水が流れ、用足しが終わり離れた際にもう一度水が流れる。たまに壁面にはこんな注意書きがある。「もう一歩前へ——」
(出演者三名/20分)

 

※演劇は生物(ナマモノ・セイブツ)です。
記載された作品詳細は変更される場合があります。あらかじめご了承ください。